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◆サービス残業撲滅
法
〜残業代の不払いに対する包囲網〜
詳細 ※このページの読了時間はおよそ10分です。
このページでは残業代の不払いを形づくる原因への対策を説明します。各原因について説明した上で、対策を述べます。そして、最後に各対策をまとめます。
本提案をより良いかたちで実現することを目指しております。不備にお気づきの方、ご意見のある方は、ぜひご教示ください。
1.残業代の不払いに対する罰則が軽い。
2015年現在、残業代の不払いに対する処罰は、労働基準法第119条によって規定されており、6箇月以下の懲役または30万円以下の罰金となっています。ただし、実際には、ほとんどの違反者は、懲役刑を受けることはなく、罰金で済んでいます。多くの経営者にとって30万円以下の罰金は大して痛くはありません。現在の処罰にほとんど抑止力がないのは明らかです。
【対策】
効果的に抑止力を発揮するくらいに処罰を適正化する。つまり、処罰を厳罰化する。
案:
●6箇月以上5年以下の懲役および30万円以上1000万円以下の罰金とする。
●氏名と顔写真を公表し、全額(遅延損害金、遅延利息金、付加金を含む)の支払いと罰金の納付が完了するまで一般公開を継続する。
2.労働者は立場が弱く報復が怖い。
労働者は経営者に対して被権力的な立場にいます。経営者は、指揮命令権や人事権を持っていますので、労働者に対し、何かもっともらしい理由をつけて、仕事内容の変更、転勤、配置転換、解雇といったことができます。そのため、労働者は、会社に所属している間は、報復的な制裁が怖くて、請求しにくい状況にあります。これは残業代の不払いを助長しています。
【対策】
報復的な制裁という行為は、請求した個人が特定できるということが前提にあります。したがって、請求した個人が特定できないようにすれば報復的な制裁を回避できます。そこで、次のような策を講じます。
●告発者についての情報に関して、労働基準監督署ほか関係各所に守秘義務を課す。
●法律の条文に労働基準監督署が無作為に抜き打ちで捜査できることをあらためて明文化する。
●実際の捜査などにおいて、表向きは、労働者の申告によるものではなく、労働基準監督署の抜き打ちによるものであるというかたちで振る舞う。
●すべての労働者に対し、使用者に感づかれないように、労働基準監督署により聴取を受けたことなど、労働基準監督署に協力したことを黙秘する義務を課し、協力時にその旨を伝え、遵守させる。
ただし、残業代の不払いが会社の中で一人だけであるとかごく少数である場合は、個人の特定は避けられませんので、この場合に対しては、特定することの防止ではなく、以下の報復的な制裁の防止を行うことになります。
不払い残業代の請求に対する報復的な制裁を行った場合は重罰を与える。
3.経営者の中に「残業代の不払いは犯罪である」という意識が希薄な者がいる。
労働者にサービス残業を強いる経営者は、「残業代の不払いは犯罪である」という意識が希薄です。これは、経営者の強欲さや悪徳性も影響していると思いますが、それらだけではなく、経営者が残業について無知であったり自分勝手な解釈をしているということが背景にあります。
【対策】
厚生労働省による啓発活動を行う。残業に該当する行為、労働時間を記録する方法、残業代の不払いに対する処罰、残業代の不払いの卑劣性などを啓蒙する。
4.労働者にとって証拠の確保がむずかしい。
残業代の不払いの証拠確保は労働者にとっては非常にむずかしいことです。証拠となるものは、使用者側で管理しているものが多いため、使用者は、労働者による証拠確保を阻止したり、証拠を隠滅することができます。そのため、労働者は、弁護士を利用する示談交渉や労働審判による請求、訴訟による請求、労働局によるあっせん、これらが困難であり、このことも残業代の不払いを助長しています。
【対策】
必要なのは、労働者による証拠の取得を容易にすること、また、使用者にも不正がないことを立証する責任を課し、労働基準監督署や裁判官、労働審判員が不正の有無を判断しやすくすること、この2つの対策です。
<証拠取得の容易化>
●労働基準監督署は、証拠集めに関して、労働者に対し助言や支援を行う。
●GPSの移動記録を利用して証拠を構成する。
●労働基準監督署は労働者に対し移動記録の取得に必要なものを無料で貸与する。
●労働基準監督署はGPSにより取得した情報の記録とその保存を行う。
●労働者が残業中の様子(たとえば機械の稼働状況、職場に滞在中の時間表示、労働者の働く姿など)をスマホなどで動画撮影することに対して、たとえそれが社内規定に違反したとしても、残業代の不払いの立証のためであるならば、使用者は処罰できないことにする。
<事実判断の容易化>
●使用者による従業員の残業時間の記録とその保存を義務化する。
●使用者による従業員の残業代の記録とその保存を義務化する。
●使用者による残業代の支払いの記録とその保存を義務化する。
●裁判において、使用者に残業の事実がないことや残業代を支払ったことの立証責任を負わせる。(たとえば、使用者側に残業の事実がないことの証拠をつくるために職場に監視カメラを設置して録画させるなど。)
●使用者に対し、時間外における従業員の職場滞在を原則禁止させる。
5.さまざまなごまかしの手口が放置されてまかり通っている。
現在、使用者は、残業代を支払わないで済ますために、次のようなさまざまなごまかしを行っています。
●タイムカードで退勤処理したあとに残業をやらせる。
●裁量労働制を適用できない職種に適用する。
●裁量労働制を自分勝手な解釈で適用する。
●残業代を支払わないという内容で雇用契約を結ぶ。
●管理職でない者を管理職として扱う。
●残業時間を計算する単位を勝手に決定し、その単位に満たない時間を切り捨てる。
●「残業」ではなく「奉仕時間」「ボランティアタイム」「自己啓発時間」などと名称を変えて偽装する。
●ちょっとした雑用や明日の仕事の準備などを残業と見なさない。
●定時内では終わらない仕事量を与えて、仕事を持ち帰らせ、自宅などの職場外で行わせる。
【対策】
●それぞれの手口について、また、予測されるごまかしについて、法律で明確に禁止する。
●法律で禁止した手口を行っていた場合は、残業代の不払いの有力な間接証拠と見なすことにする。
6.労働基準監督署が有効に機能していない。
労働基準監督署に相談したら、自分で解決するように促されることがほとんどのようです。自分で解決できるなら、わざわざ相談しませんが、なぜ労働基準監督署は、自分で解決することを促すだけで、積極的に取り合わないのでしょうか? これについては、別に労働基準監督署に問題があるわけではなく、労働者側の問題で、相談前に労働者が証拠の確保をしていないということが原因であるという見方があります。しかし、そういう場合があるにしても、相談しようとしたら、門前払いを受けたという方もいるようですので、労働基準監督署の消極性は確かなようです。いったいなぜ有効に機能しないのでしょうか?
労働基準監督署にはどんな問題があるのでしょうか? 過去の判例を根拠に積極的に活動する義務がないことになっているという指摘もあります。また、人手不足という指摘があります。労働基準監督署という職務は、法律の定めにより、そもそも労働基準法の違反に対して積極的に活動するためにつくられた組織です。明らかに義務があります。そして、労働基準監督官は3000人以上います。過去の判例や人手不足が理由であるとは思えません。
なぜ労働基準監督署は消極的なのか、これはよくわかりません。これは単に行政機関の怠慢(厚生労働大臣や内閣総理大臣である人物の労働問題に対する姿勢の問題も含む)ではないのかとも思うのですが、結局、これについては、現場の労働基準監督官など内情にくわしい方にしかわかりません。
どのような理由にせよ、もっと積極的に活動するように、対策を講じる必要があります。
【対策】
●サービス残業の撲滅を労働基準監督署の優先課題とする。
●専門の部署を設けて、必要な人員を配置する。
●労働基準監督署の証拠集めの協力を義務化する。
●証拠がある場合は、労働基準監督署が捜査することを義務化する。
7.給与計算の担当者や管理職者が使用者側の言いなりになって加担している。
給与計算の担当者や管理職者が、従業員の残業があることを知りつつも、使用者のごまかしに加担して、不払いを隠匿している場合があります。
【対策】
●不払いに加担していた給与計算の担当者や管理職者に対しても処罰(罰金)を与える。
●ただし、不払いの事実を通報した者、または、証拠の確保に協力した者は、たとえ加担していたとしても、秘密裡に罰金を免除することにする。(こうすることで、使用者のリスクを高め、不払いの抑止につなげます。)
8.残業代の不払いの時効が2年である。
残業代の不払いには時効があります。しかも、わずか2年※1であり、これはあまりにも短すぎます。これでは悪徳な経営者に残業代の不払いを促しているようなものです。この時効を5年にするという政府の動き※2もありますが、たとえ5年になっても、短いことに変わりはなく、抑止効果は期待できません。
※1労働基準法115条
※2賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会
【対策】
時効をなくす。
(時効を設けておく正当な理由はありません。労働基準法で時効を設けている理由は、賃金台帳等の記録の保存に費用がかかるので、これが経営を圧迫しないようにするためということのようです。しかし、今の時代は、費用をかけずに保存できます。紙の時代ではありません。M-DISCなどの電磁的記録媒体による保存の費用は経営を圧迫するほどかかりません。時効を正当化する事情はすでに消滅しています。)
対策のまとめ
サービス残業の撲滅のために行うべきことは次のようになります。
1.厳罰化する。
2.1.使用者に告発者の推測をさせないため、労働基準監督署と関係各所に告発者に関する情報の守秘義務を課す。
2.2.労働基準監督署の抜き打ち捜査権をあらためて明確に定める。
2.3.使用者に告発者を特定されないよう、労働基準監督署には慎重に行動させる。
2.4.労働者に捜査協力したことの守秘義務を課す。
2.5.報復的制裁を禁止し、行った場合は重罰を与える。
3.啓発活動を行う。
4.1.労働基準監督署が証拠取得に関して労働者を支援する。
4.2.GPSの移動記録を利用して証拠を構成する。
4.3.労働基準監督署が労働者に対し証拠を取得するために必要なものを貸与する。
4.4.GPSにより取得した情報を労働基準監督署が記録し保管する。
4.5.証拠取得のための動画撮影や録音は社内規定に違反しても使用者は処罰できないことにする。
4.6.使用者に残業時間の記録とその保存を義務化する。
4.7.使用者に残業代の記録とその保存を義務化する。
4.8.使用者に残業代の支払いの記録とその保存を義務化する。
4.9.使用者に、残業の事実のないこと、また、残業代を支払ったことの立証責任を課す。
4.10.時間外における労働者の職場滞在を原則禁止する。
5.1.さまざまな偽装や隠蔽行為の手口を法律により禁止する。
5.2.偽装や隠蔽行為に該当する行為があった場合は、サービス残業の有力な間接証拠と見なす。
6.1.サービス残業の撲滅を労働基準監督署の優先的課題とする。
6.2.サービス残業を撲滅するための専門の部署をつくり必要な人員を配置する。
6.3.労働者の証拠取得などに労働基準監督署が協力することを義務化する。
6.4.証拠がある場合は、労働基準監督署による捜査を義務化する。
7.1.不払いに加担していた給与計算の担当者や管理職者に対しても罰金を科す。
7.2.加担者が通報した場合、または、証拠の確保に協力した場合、その加担者に対する罰金を免除することにする。
8.時効をなくす。