このサイトは「退去時修繕費判定制度」の実現をめざす社会運動のサイトです。
◆退去時修繕費判定
制度
〜不当請求を撲滅するしくみ〜
補足 ※このページの読了時間はおよそ6分です。
このページでは以下のことについて説明します。
●判定のしかたについて
●善提配慮義務
●差し替えと修正の防止策
判定のしかたについて
国(運営機関)は貸主側からの申請で借主に修繕費を請求できるかどうかの判定を行いますが、この判定を行う上で、国は、借主に過度な善管注意義務を課すことのないように、一般市民の生活のあり方や設備の材質などに十分配慮するようにします。
一般市民の生活のあり方に配慮して判定するというのは、破損や汚損が一般市民の生活上やむをえないと言えるものについては、借主が費用負担をしなくてよいことにする、ということです。たとえば、現在、東京都が作成したガイドラインでは、壁のネジ穴については、借主の負担ということになっていますが*1、日本はどこでも震災のおそれがあり、命を守るために家具類をネジで壁に固定し転倒防止を図ることは生活上やむをえないことであり、修繕はパテで埋めるだけですし、その痕が特に目立ったり壁の機能を損ねたりするわけではないと思われますので、隣の部屋に貫通するほどのものでない限り、ネジ穴については、借主が費用負担しなくてよいことにする、というような判定を行うということです。
また、設備の材質などに配慮して判定するというのは、たとえば、東京都が作成したガイドラインでは、キャスター付きのイス等によるキズやへこみは借主の負担ということになっていますが*2、フローリングというものはちょっとしたことでキズが簡単にできてしまうものであり、長く居住してフローリングにキズをつけずに生活するなどということは不可能ですし、貸主が借主からフローリングの補修代や張替え代を領収しても多少のキズやへこみぐらいで実際に補修や張替えをすることなどあるわけがないので、フローリングの多少のキズやへこみについては借主の負担にしない、というように判定するということです。
*=出典(出典については「このサイトについて」のページにて「資料情報」をご覧ください。)
善提配慮義務
退去時の修繕費用を借主に負担させるかどうかを判定する上で、「善管注意義務」という理念があります。これは、「借主は、善良な管理者としての注意をもって、部屋やその設備を維持管理するよう努めなければならない」というものです。退去時は破損や汚損だらけで明け渡されるおそれがありますので、この理念には正当性があります。
しかし、この理念だけを念頭に判定を行うのは、一方的であり、不当な判定をもたらします。東京都のガイドラインの「貸主・借主の負担区分」*3が不当に思えるのは、借主の「善管注意義務」という理念のみに重きをおいて、判定しているからです。
判定が正当なものになるためには、「善管注意義務」という借主の義務の理念だけではなく、貸主の義務の理念も必要であると考えます。
そこで、ここでは、貸主の「善提配慮義務」という理念を提案します。これは、「貸主は、善良な提供者として、勤労者の多忙や低所得者の経済的事情、一般的な高齢者の身体能力などに対し、良心による十分な配慮をもって、維持管理が過度にめんどうくさくならないように、また、非常に困難ではないように、部屋やその設備を提供するように努めなければならない」というものです。
この貸主の「善提配慮義務」という理念を念頭に置いて判定すると、次のようになります。
【例1.フローリングのキズやへこみ】
▲フローリングは非常にキズやへこみがつきやすいものである。
▲通常の生活において床にキズをつけずに生活するということは不可能である。
▲全面にカーペットを敷かせるのは非常に高額な出費を強いることである。
▲貸主が床材をフローリングにして提供したということは、多少のキズやへこみについては、貸主は部屋を貸す上で承諾しているものと見なすことができる。
➡したがって、フローリングの多少のキズやへこみは貸主の負担とする。
【例2.キッチンまわりの壁の油汚れ】
▲キッチン周りは調理のさいに油などの飛沫がつくものである。
▲これを調理後に毎度毎度清掃するということを多忙な一般市民に強いることは酷なことであり、それを善管注意義務とすることは、他人を人間として尊重していない過度な要求である。
▲汚損を防ぐためには、施工の際にキッチンまわりの壁をキッチンパネルで覆うなどするべきである。
▲貸主がキッチンまわりの壁をキッチンパネルで覆わずに提供したということは、多少の油汚れについては、貸主は部屋を貸すうえで承諾しているものと見なすことができる。
➡したがって、キッチンパネルで覆われていない場合は、キッチンまわりの壁の油汚れなどは貸主の負担とする。
差し替えと修正の防止策
貸主側と借主いずれも証拠となる写真などを差し替えたり修正したりして不正を行うということがありえます。
これに対する対策は次のようになります。
入居時
【貸主側による不正】
[差し替え]新築時やリフォーム直後、前の入居者の入居時、前の入居者の退去時の写真を保存する。
[修正]破損や汚損の箇所を修正して保存する。
【対策】
●できるだけ入居前に立ち会いで確認する。
●借主は確認時に動画撮影する。
●借主は確認日当日中に写真などを保存する。
●貸主側の保存したものは入居日から日時がたてばたつほど証明力が低くなることにする。
●判定のさいは貸主側が以前に保存したものや前の入居者が保存したものも参照する。
●借主は貸主側が以前に保存したものを閲覧できるようにし、不正の疑いがある場合は運営機関に通報できることにする。
●貸主側は借主の保存したものは閲覧できないことにし、借主の保存のし忘れにつけこむことができないようにする。
●差し替えや修正があった場合は行った者を処罰する。
退去時
【借主による不正】
[差し替え]退去時に撮影した写真や動画を入居時のものとして保存する。
[修正]退去時のものを使って、入居時のものを修正し、元から破損や汚損があったかのように修正する。
【対策】
●借主が入居時のものとして保存したものは入居日から日時がたてばたつほど証明力が疑われることにする。
●貸主側は入居時に立ち会いで確認しておく。
●貸主側は立会確認時に動画撮影しておく。
●貸主側は立会確認を行った当日中に保存し、保存したものの証明力を高めておく。
●借主が差し替えや修正を行った場合は借主を処罰する。
【貸主側による不正】
[差し替え1]前の入居者の退去時のものを借主の退去時のもの偽って保存する。
[差し替え2]借主が完全に退去した後に、故意に破損や汚損をつくり、その写真や動画を退去時のものとして保存する。
[修正]退去時の写真や動画を加工し借主によって破損や汚損が生じたことにして保存する。
【対策】
●できるだけ入居時も退去時も立ち会いで確認する。
●借主は確認時に動画撮影する。
●借主は確認日当日中に写真などを保存する。
●貸主側の保存したものは入居日から日時がたてばたつほど証明力が低くなることにする。
●判定のさいは貸主側が以前に保存したものや前の入居者が保存したものも参照する。
●借主は貸主側が以前に保存したものを閲覧できるようにし、不正の疑いがある場合は運営機関に通報できることにする。
●貸主側は借主の保存したものは閲覧できないことにし、借主の保存のし忘れにつけこむことができないようにする。
●差し替えや修正があった場合は行った者を処罰する。